2010-12-29

FAVORITE DISCS 2010

気付けば年の瀬。COUNTDOWN JAPANも始まってしまった。
わたしにとって今年は音楽の年でした。
聞くものの幅も量もグッと増えて、自分の趣味もわかってきて、すごく楽しかった。
ということで、とやかく批評できるようは耳は持っていませんが、個人的に今年よく聴いたものとか気に入ったものと、その思い入れ(笑)を、記録。

まず、アルバム。

★サカナクション「kikUUiki

今年は1年間サカナクションを追い続けましたねえ。
シンシロが出て暫くしてから聴き始めたんだとおもうけど、CDJで初めてライブ観たときに楽しすぎてどハマりして、年明けにCDと配信音源と全部買って、それから1年間ずっと聴き続けた。こんなにわかりやすくハマったのって初めてかも。

そしてこのkikUUikiは、ファンになってから初めて出たアルバムになるわけで。
製作過程等のインタビューを読んだり、目が明く藍色のSOLでの初オンエアを聴いたり、リリパのUSTを観たり、ツアーへ行ったり、「汽空域」という考え方、サカナクションのやりたいこと、全体的に観れた感じがする。

でも、純粋に音源として、各所で言われているように名盤だなあとおもえるようになってきたのは、最近のこと。なんとなくすきってだけじゃなくて、自分なりに噛み砕いて受け止めるまですごく時間がかかった、それだけ濃厚。一曲一曲、色んなアプローチで表現された汽空域の世界。サカナクションらしさの再定義。これだけ色んなことをやってもブレないのは、やはり山口一郎の詞曲がしっかりと核になっているからだろうな。
個人的にすきなのは1stのシンプルさだけど、あらゆる面で、ファンを獲得しては裏切ってくれる彼らが本当にすきだ。


★□□□「everyday is a symphony」






発売は2009年の12月だけど、個人的に2010年を象徴する一枚。
フィールドレコーディングの手法を全面に押し出して、電車の音や卒業式の様子、話し声など、普通の生活の音が使われているのに、□□□らしい洗練されたサウンドとのバランスが心地良い。

リリース記念のライブをUSTREAMで中継したことは当時衝撃でした。Twitterでの感想を会場に流したり、開演前のお客さんのコメントやメンバーの様子をすぐに編集して音楽にして流したり、ライブで水の入ったバケツを使ってフィールドレコーディング的なものを再現したり、ステージでダンサーというより役者のような人たちがパフォーマンスしていたり、兎に角すべてが新しくて、終演後も感動のツイートが流れ続けていた。UST界隈のことは詳しいわけじゃないけど、あの盛り上がり方をおもいだしても、少なくとも日本ではほぼ初めての取り組みだったんだとおもう。

それだけじゃなくて、ナタリーのインタビューの音声すら音楽にしてしまったりとか、2010年に入って4月のライブでは今度はお客さんからiPhoneユーザーを募って色んなアングルからUSTしてもらってそれを公式のサイトから観れるようにしていたり。
そういった、カジュアルさ(制作もプロモーションも)と音楽的なクオリティの高さの両立が、すごく2010年的というか、2010年代の始まりという感じがします。
わたしはきっと、このアルバムを聴くたび2010年とおもいだすんだとおもう。


★安藤裕子「JAPANESE POP」






わたしがすきなJ-POPは、安藤裕子と岡村靖幸。
逆に言うと、純粋に音楽として大好きなミュージシャンの中で、J-POPとしか呼べないものはこの二人だなあ、と、なんとなくおもっていた。
そしたらこのタイトル。本人は深い意味はないと言っていたけれど、あまりに批評的で潔くて素晴らしい。
対して中身はというと、リスナーに媚を売るようなPOPすぎるものがあるわけではなくて、あくまで安藤裕子なりのJAPANESE POPで。ゆるさが気持ち良い「健忘症」とか、彼女の魅力である独特の歌い方を変えてみてしまった「アネモネ」とか、全体的に肩の力が程良く抜けていて、大人の余裕があるけど可愛らしさも失っていない、そんな感じがすごくすきです。
そして「歩く」が名曲。インストアライブでエピソードと合わせて聴いて以降、この曲を聴く度に泣いてしまって困っている・・・。
でもバラードを中心にどの曲も良くて、結構盛り沢山の内容なんですが、全体の印象として重くならずにバランスが取れているのがすごい。やっぱり、安藤裕子はわたしにとって理想のJAPANESE POP。


★七尾旅人「billion voices




旅人さんを初めて知ったのはUSTだったはず。そしてDOMMUNEでのライブがもう素晴らしくて。ツイートを即興で歌に入れてみたり、USTを観てる人に「部屋の電気消して」と呼びかけて同じ会場にいるのとはまた違う不思議な一体感を生み出したりしていて感動した。そういう意味で、□□□と並んで個人的に2010年らしいイメージ。


そしてこのアルバムは、そういう不思議な夜の雰囲気をそのまま閉じ込めたみたい。時に激しく叫び時に静かに囁き、どこまでが計算されているのかわからないけど、その全部が音楽の喜びとして感じられて、でもちょっと淋しくなる。
一番すきなのは「どんどん季節は流れて」。上質なJ-POPという感じ。誰でも聴きやすくて、かっこつけてなくて、こういう曲が売れるといいのになあと思わざるをえない。
あと、ジャケがすごーくすきです。


★星野源「ばかのうた





これはTSUTAYAでずっと貸出中だったので12月に入ってやっと聴けて、でも予想以上にハマってしまって結局CD買いました。そんなことわたしには珍しい。

というのも、なんだか無性に歌詞カードを眺めたくなったから。天邪鬼なわたしは「歌詞が良い」って褒め方は苦手なんですが、星野さんの詞はすごくすき。

孤独だったり淋しかったり、人間の悪いところから逃げないけれどネガティブではなくて普通のこととして受け入れているところ。「くせのうた」の、「寂しいと叫ぶには 僕はあまりにくだらない」とか。「ばらばら」の、「世界はひとつじゃない  ああ  もとより  ばらばらのまま  ぼくらはひとつになれない  ああ  そのままどこかにいこう」とか。まだ29歳(今年度中に30歳に)と知ってびっくり(笑)。おじいちゃんというアダ名だったのも納得。
そして、文学的な雰囲気を持ちつつも、「糞をして」「エロいナース」「禿げた君の髪」「ひかれそう」みたいなこともさらっと歌ってしまうところ。日本語を大切にしている感じがするのに、それに固執せず英語詞もさらっと入れてしまうところ。

で、そんな、あたたかい詞と優しい声なんだけど、アレンジがひねってあってカッコイイのだ。にやりとしてしまうところが幾つか。
細野晴臣「HOSONO HOUSE」がすきな方は必聴かと。



つぎに、新人編。

世界の終わり、かまってちゃん、ねごとあたりが話題になりましたが、わたし的には、
ふくろうず!!


2nd「ごめんね」を聴いてすきになりましたが、1st「ループする」も負けずに良い!
ボーカル内田さんがすごい。一見かわいくてポップな曲が多いけれど、歌声に感じる狂気が独特で、歌唱力とはまた違う引力がものすごい。詞も、「ごめんね」の「君はすてきだ!困った顔がよく似合う」とか「すばらしい世界」の「生きるすばらしさを  誰かがまたこりずに歌ってる」とか、シンプルな言葉で時折ドキッとするフレーズが入ってきて、すき。
良い意味で「頑張ってる感」がないバンドなので、今後どれだけ続くかちょっと心配(笑)ですが、たのしみ。


あとは、一曲単位で印象的だったものを。

★環ROY「break boy in the dream」

□□□と七尾旅人との豪華なコラボ曲!
3組の相性が最高。綺麗でかっこよくて切なくて。
イントロのキラキラが桜の季節にぴったりでよく聴きました。




★SMAP「We are SMAP!」

作詞 太田光、作曲 久石譲。
兎に角、太田光の詞が素晴らしい。
「エンジンは、好奇心さ。科学でもなくて。/笑い声。歌の音。魔法のエネルギーさ。//繋ぐのは、物語。権利でもなくて。/キミの声。笑い声。無限のエネルギーさ。」
句読点の使い方、片仮名の散りばめ方、平易な言葉を使いながらも、溢れるセンス。歌詞じゃなくて、詩として成立してる。(←初めて聴いたときの感動のツイート。)
飾り過ぎない詞が、久石譲の作曲・編曲で壮大な曲になりながらも引き立っていて、感動的。
「SMAPには勿体無い」と言う人ももしかするといるかもしれないが、わたしはSMAPにしか歌えない曲だとおもう。「HEAL THE WORLD」がマイケルが歌うからこそ意味があるように、壮大なメッセージソングは歌い手を選ぶ(知名度や人気という意味で)とおもうから。
多くの人に聴かれて欲しい1曲。



★サカナクション「ホーリーダンス」

アイデンティティとは対照的なカップリング曲。
イントロからブリブリの電子音がカッコよく心地良くて、「お お、お お」と繰り返すAメロの遊び心ににやっとして、サビ・・・ん、サビ前か?「だから今を」のところの、真夜中の開放感が気持よくて、最初から最後まで大好き。
サカナクションの曲はほとんどすきですが、思い入れのある曲はシンシロまでのものが多くて。そんな中この曲は久々にわたしの好みど真ん中でした。
こういう曲がカップリングになってしまう「戦略」はちょっと淋しいけれど、きっと正解なのでしょう。どうにか「アイデンティティ(笑)」っておもった人に聴かせたいな。

★Perfume
「ナチュラルに恋して/不自然なガール」
「VOICE/575」
「ねぇ/FAKE IT」


Perfumeの今年出した3枚のシングル、カップリングも含めてすごく良かった。
キャッチーさとカッコ良さのバランスがやっと取れたという感じ。すき。
それだけ安定した人気を得たということなんだろうとおもうと、本当にうれしい。
こうなると次のアルバムが楽しみなんですが、発表はまだかしら。




ああ、すっきりした(笑)
有名なのばかりでごめんなさい。
せめてもう少し音楽用語とか知ってれば良いのだけど・・・。

来年も沢山の素敵な音楽と出逢えますように。
沢山の素敵な音楽が生まれることができますように。
素敵な音楽が沢山の人に届く年になりますように。


2010-12-12

Van Gogh

一昨日、国立新美術館で開催されている「没後120年 ゴッホ展 こうして私はゴッホになった」を観てきました。
随分前から楽しみにしていたのに、やっと。
でも本当に行ってよかった。

なんといっても、「サン=レミの療養院の庭」
精神を病んで入院していて外出できなかった頃に、荒れた庭を描いたもの。














これ、写真で見ると、わたしが普段好きになれないタイプの画なんだ。
色も多いし、ごちゃごちゃしているし。黒の使い方もすきじゃないと、一瞬おもった。
でも、間近で観たときのエネルギーがものすごくて。
植物の持っている、目には見えない生命力が画面から溢れ出している感じ。
圧倒されてちょっと涙がでた。
やっぱり生じゃないと分からない良さってあるなあと再確認できました。

あと印象に残っているものメモ。
今回なぜか、木の幹の描写に目が行きました。
普段、空と海と木の枝葉は注目して観ているんだけど。誰もが描くけど個性が出やすいから。
でも幹をちゃんと観たのははじめてかも。

「マグロンヌの地中海風景」ギュスターヴ・クールベ
  構図と色彩のバランスが、これしかないっていうくらいに落ち着いていてすきでした。空の淡い色と海の深い青色が引き立て合っていた。

「マルメロ、レモン、梨、葡萄」ゴッホ
  展覧会の説明にもあったけどゴッホの画は補色、特に黄色と青の使い方が印象的ですが、これはほぼ黄色。額縁もゴッホ本人が彩色したもので、黄色。黄色と言っても黄土色っぽいくすんだ色なので主張しすぎないのが良い。独特の筆使いが引き立っていた。

「モレのポプラ並木」アルフレッド・シスレー
  シスレーで初めてすきだと思った。手前の木の幹に光が当たって木陰ができている感じが、すごくリアルに自然の安心感を感じさせられてドキっとした。

「オンフルールの港の入口」ジョルジュ・スーラ
  スーラも苦手だとおもっていたけど、この作品は点描の使い方と色遣いでうまく奥行きが出ているのが気に入りました。

「アルルの寝室」ゴッホ
  たくさんの色を使っているのに全くうるさくないし、飾り気のない寝室なのに美しいのは、どうしてだろう。

「種まく人」ゴッホ
  浮世絵に影響を受けたと言われる大胆な構図。暗く描かれた手前の人物と、バックの大きな大きな夕日と明るいの空の対比に、わたしのすきな人やモノの根っこがある気がする。

「ある男の肖像」ゴッホ
  歪んでいるのに均整が取れていて、おじさんなのに綺麗な画で、不思議と惹かれた。

「あおむけの蟹」ゴッホ
  一見してゴッホっぽくないと感じましたがものすごくすきです。たくさんの赤と緑がとても綺麗。不安定なアングルと細かい描写と力強い色遣いで蟹が生き生きと感じられた。

「蔦の絡まる幹」ゴッホ
  印象に残っていうのは、茶色と緑の地味な色。うねる筆遣い。観る場所によって表情を変える。

「夕暮れの松の木」ゴッホ
  手前に大きく描かれた松の木の幹が、なんというか色気があってすごく惹かれた。きっとこの木を描きたくてこの絵を描いたんじゃないかなあと感じました。

「アイリス」ゴッホ
  綺麗な、ゴッホらしい黄色と青(元は紫に近かったらしい)の対比で、晩年の作というのが意外に感じました。背景の明るい黄色と塗りのシンプルさでバランスがとれているけれど、アイリス自体は枯れかけているものが混じっていたりと力強くも哀しい表情をしていて、でも全部ひっくるめた美しさを感じました。


ゴッホはいちばんすきな画家です。
すきになったきっかけは幾つかあるけど、そのうちのひとつが、富山県立近代美術館の「AIGコレクション 印象派の光  エコールドパリの夢」で観た「夫は漁に出ている」。
(サイトを観ると、今回展示されていたゴーギャンの「ブルターニュの少年と鵞鳥」がポスターに使われている。なんか既視感があったけれど再会だったんだ。)
療養所に入院している頃に描かれた、確か模写の作品だったと思うのだけど、あまりにも陰鬱なオーラを発しているのにすごく惹かれてずっと観ていた。

有名な耳を切ったエピソードもあったり、ゴッホというと精神病だとか孤独といかいうイメージが強くて、わたしもそういうところに当てはめて観がちだったけれど、今回それだけではないところもちゃんと観れた感じがした。
ミレーの模写を沢山していたり、印象的な色彩についてもきちんと学んだものであったり。他の画家に比べると独学のところが多いとはいえ、勿論勉強していないわけではないんだよね。

あと、わたしはゴッホの筆遣いがすきなのでいつもはそこばかり観ていたけれど、今回印象に残ったのは色の美しさ。美しさというより、わたし好みという感じかな(笑)。おなじ色でもグラデーションでたくさんの色が使われているけど、ひとつひとつがすごく好きなことに気付きました。


もしもこれを読んでくれた人で美術館にあまり行ったことのない人がいれば、是非行ってみて欲しいな。画家が選んだ色や作品の発するエネルギーは絶対に実物を観なければわからない。油絵だったら絵の具の塗り方によって一枚の画の中でも全然表情が変わるけれど、それは写真では決してわからない。近くで観るのと離れて観るのでは全く違う印象を受けたり。ライブに行ってこそわかる音楽の良さがあったりするのと同じだね。
もう少し空いていて静かに鑑賞することが出来るのならもっとおすすめできるのに。

来年はシュールレアリスム展があるみたい。
ダリがたくさん来るといいな。
メディア芸術祭とアーティストファイルも行こう。