2014-04-22

MUSIC2013

日本一遅い2013年自分的ベストアルバム紹介。
年末年始にほとんど書いて放置してたのでその頃の順位ということで。笑


1.私立恵比寿中学「中人」














衝撃的に良かった。正しくアイドルポップの範疇にありながら、個性的で存在感が強い曲が揃っている。とはいえ程よく力を抜くところもあって、通して聴きたくなる収まりの良さもある。普段好きなアーティストのアルバムを聴いて、多少の違和感があっても色々理屈を並べてなかったことにすることが往々にしてあるけど、そういうのが馬鹿馬鹿しくなるほどに手放しで良い。好き。

中でも『誘惑したいや』は去年のマイベストソング!めちゃくちゃ聴いた。



今を生きる10代の一生懸命さを感じさせる速めのビートに扇情的なストリングスが乗って、きゅんきゅんしすぎて涙腺が緩む。
「私はあなたの目で飛んでいけるわ」
女子!

この曲もそうだけどほとんどの曲が普通の10代の悩みや叫びや日常を歌っているのも良いと思う。そして歌声も曲に負けずに本当に良くって。
9人という多めの人数は歌詞の「普通の10代女子」感に説得力を持たせてくれる。でもそれぞれの個性もはっきりしていて、特にぁぃぁぃと安本さんと美怜ちゃんがいることで楽曲がすごく締まると思います。
ぁぃぁぃに関してはアニメ声ももちろんだけどカッコいい方の歌い方がすごくて、曲の色を一瞬で変えるくらいの力がある。くどいくらいで最初は苦手だと思ったのに、9人の中だとちょうど良く輝いてハートを底から動かしてくれるから、良いグループだなぁと思わされる。ぁぃぁぃの他にもりななんやひなた、真山と低中音域をカッコ良く歌えるコが揃っているのも良い。(そしてそういうコがいても疲れないのは瑞季やなっちゃん、ひろのさんがいたからであり…転校残念すぎる

それから、YMO『体操』のカバーや同じくYMO『増殖』におけるスネークマンショーを思わせるコントなんかのインタールードが収録されているのが、サブカル心をくすぐられる。インタールードは何度か聴くと邪魔になることも多いけど前述した声の個性が活かされているから全くそんなことがないし、個性の強い楽曲が並ぶ中で良い箸休めになると同時に、アルバムに統一感ももたらしている。
文句なしのナンバーワン!



2.ふくろうず「テレフォンNo.1」













以前こちらに(http://aya717.blogspot.jp/2013/12/no1.html)書きましたが、やっぱり内田さんの作る曲と詞と内田さんの歌声が大好きなんだ。ミニアルバムなのにずっとリピートして聴いてました。どんなに好きになったアルバムでも何度も聴くと新鮮味が薄れて聴き流すようになってやがて聞かなくなってしまうけど、ふくろうずに関しては何度聴いてもその度にだいすきだなーって思ってる。

必然も偶然も終わっちゃえば意味無いじゃん。
今年こそ売れろっ!


3.サカナクション「sakanaction」













なんだかんだで大好きなサカナクション、6枚目のオリジナルアルバムで、初のセルフタイトル。前作は万人に薦めやすいバランスの取れた作品で、その後「僕と花」「夜の踊り子」「ミュージック」「Aoi」と大型タイアップが続いてそれに伴いメディア露出も増えたということで、どんどん一般受けを狙っていくのかなと思いきや、ポップな面は既存曲に任せて結構攻めた印象の面白いアルバムだった。やっと立ち回りやすい地位に来たということなのかな。

「なんてったって春」の言葉遊びというか、響きの面白い歌は、久々にわたしの好きなサカナクションらしさを出してもらえた感じ。歌詞のインパクトの分アレンジは抑えめな印象だけど、後半の自然な盛り上がり方とか、本格的なクラブミュージックっぽくて楽しい。
クラブ寄りな前半からアルバム後半はフォーク寄りの曲が並んでいて、今のわたしの気分はこっちのサカナクションだなぁと思う。
特に「ボイル」の畳み掛けるような、息遣いを感じる歌唱は今までになかった感じでとても好きだ。



4.tofubeats「lost decade」















『水星』でプチブレイクして、一昨年わたしも印象的だった曲のひとつに挙げたtofubeatsですが、こんなにも彼の名前を聞くようになるとは思っていませんでした。なんだか嬉しい時代が来た!

水星や夢の中までを聴いておしゃれヒップホップなイメージを持っていたのだけど、アルバムを聴いてみるとintroを除いて一曲目の『SO WHAT!? feat.仮谷せいら』がJ-POPでびっくり。”いつも足りない24時間を 今夜は縮めていいよ神様”なんてとってもかわいいし、”そーわそわそー!”ってみんなで言いたいし、カラオケで歌いたくなる、まさにJ-POP。むしろアイドルソング。
でもカッコつけてなくてヤンキー的なヒップホップとか抵抗ある人でも聴きやすいってことで言えばある意味イメージ通りで、門戸を全開にしてくれている一曲目。

アルバム前半はテンション高くポップな曲が続いていて、特に『Les Aventuriers feat.PUNPEE』が大好き。PUNPEEはいかにもないかついラップなんだけど、歌詞は学生生活を懐かしみつつ大人になってから意外とクラスメイトと仲良くなったりして悪くないよねーみたいな爽やかでちょっとキュンとして万人が共感するところがあるもので、とても素敵なのです。そして次の『Fresh Salad feat.SKY-HI』ではトラックもいかつさを出してくるど、この頃にはすでにいかつさにも抵抗もなくなっているという流れ。というかSKY-HIってAAAの人だと最近気づいてびっくりしました。

M6を繋ぎにM7からはちょっと落ち着いた曲やシリアスな曲。どれも派手さはないけどかっこいいんだー。『No.1 feat.G.RINA』聴くとm-floを思い出すよね。やっぱりシングルの『夢の中まで feat.ERA』『水星 feat.オノマトペ大臣』が良いです。そして『LOST DECADE feat.南波志帆』の最後の曲っぽさも最高。
無理なくテンションが上げられるので外出する時iPodで迷ったらコレって感じで再生してました。



5.泉まくら「マイルーム・マイステージ」















女性ラッパー…ではなくて、「ラップをする女の子」らしい。たしかにそちらの言葉の方が良く似合う泉まくら。ロリ声で、独り言や鼻歌の延長線上にあるように聞こえるラップは、しかし気持ち良くトラックに乗っていて、誰かにやらされているとかではないちゃんとしたラッパーなんだなと分かる。

歌詞はすごく生活感が溢れていて、聴いていると自分も恋愛至上主義な女子みたいに切なくなれる。
”失恋休暇とやらが取れるらしいので早速2連休中です”(『ワンルーム』)って歌い出しのインパクトとかすごいなぁと思う。そして ”触ったことのないプレステだけど置いてったんなら貰おう”と続くこの生活感。
”いくつかの角曲がるたび ちゃんと君を振り返れば良かった さよなら”(『君のこと』)っていうところも好き。

美しいトラックにかわいいけれど生々しい湿ったラップが乗るテンションがちょうど良くて、出掛けるときによく聴いてます。EVISBEATSやFragmentなど多彩なプロデューサー陣が参加しているので、バリエーション豊かで聴き応えもあるアルバム。



6.青葉市子と妖精たち「ラヂオ」













ラジオで放送された青葉市子、坂本龍一、小山田圭吾、U-zhaan、細野晴臣による豪華すぎるセッションの音源化です。試聴するだけのつもりで聴いて、一瞬で打ちのめされて購入を決めたアルバム。

このメンツを見ただけで素晴らしくないわけないのですが、”妖精たち”は決して前に出過ぎることなく。坂本龍一の雪のようなピアノと小山田圭吾の風のようなギター、それからU-zhaanの不穏なタブラの響きは、青葉市子の母のような魔女のような歌声の魅力をを引き立ててくれる。一方で細野晴臣と共演した曲では少女のよう。普段のシンプルな弾き語りよりも、音が広がることで彼女の凄さが解りやすくなっていると思います。

選曲的にも、ファーストアルバムから最新アルバムまでバランス良いだけでなく、Cornelius「STAR FRUITS SURF RIDER」や細野晴臣「悲しみのラッキースター」、「Smile」のカバーも収録されているので、青葉市子ってどんな人だろ?って方にはすごくオススメです。

動画は最新オリジナルアルバムに収録されているカバー曲でこのアルバムと違うんですが、素晴らしいので貼っちゃう。



7.lyrical school「date course」
















ヒップホップアイドル・リリスクの改名後初のオリジナルアルバム。
まずこのジャケの素晴らしさ!惚れ惚れします。Twitterで何度も言っているけど、リリスクのアートワークは本当に良い。

インタールードを除いた10曲のうち半分の作詞・作曲・編曲が今をときめくtofubeatsによるもの。他の作家陣も、イルリメ、okadada、Fragmentなど手堅いので、音楽ファンはそれだけで聴く価値ありです。
なので一曲一曲のクオリティは高いのはもちろん、複数の人が関わっているにも関わらず通して聴いたときのまとまりの良さがこのアルバムのすごいところ。タイトル通りデートがテーマになっていて、アルバムの中で恋の始まりと、失恋、そして失恋から立ち直るところまでが描かれている。

□□□が昨年リリースした「JAPANESE COUPLE」も同様の構成だったけれど、あちらはオムニバスの短篇集のような印象だったのがこちらは主人公像がはっきりしていてブレないのが良い。後半の失恋の曲で、楽しかった頃を回想するようにアルバム前半の曲のモチーフが散りばめられていたり。そしてもちろんその主人公はリリスク自身で、親しみやすいリリスクの雰囲気が反映された、ごく普通の女の子だ。

最初にリリスクを聴いた時、ラップのこなれてなさが気になったのだけど、今ではそれすらも彼女たちの魅力なのだなと分かる。あくまで普通の、しかし明るくて純粋な女の子が、カッコつけたりせずに楽しくヒップホップを歌う。その歌詞のリアリティは、提供された曲というのは百も承知で彼女たちはこういう風に恋をするに違いないと思わせ、彼女たちを好きにさせてしまう。
(ちなみに、最近よく聴いている90年代SMAPの楽曲についても同様の感覚がある。提供曲のラブソングでこれだけ本人とシンクロして聞かせられるってまれな気がするし、強い。)

「リボンをきゅっと」の”今夜恋愛ごっこしない?もう彼女でいいんじゃない?”ってフレーズがとても好きです。でもそれ以上に「でも」「P.S.」「ひとりぼっちのラビリンス」の失恋三部作がたまらないです。さっきはラップがこなれてないなんて書いたけど、こういうシリアスな曲でサムくならない表現力はさすがだと思う。




なんかもう順位決められないのでこのへんで。

あとは

さらうんど「New Age」(素晴らしかった前作に勝るとも劣らない内容)
片想い「片想インダハウス」(せつない。シンさんの歌声は誠実だ。)
Perfume「LEVEL3」(シングルと「ふりかえるといるよ」が良すぎ)
星野源「Stranger」(ずっとライブなかったのが痛いけど良いアルバム。「ある車掌」大好き)
KANA-BOON「僕がCDを出したら」(歌声が気持ち良いしバンドのバランスも良いし曲も粒ぞろい。高校生の頃に聴きたかった感じ。)
ももいろクローバーZ「5TH DIMENSION」(アルバム全体としてちょっと疲れる感じになっちゃってるけど、好きな曲は多い。「5 THE POWER」と「灰とダイヤモンド」が良すぎる)
きのこ帝国「ロンググッドバイ」(アンニュイさは残しながら霧が晴れたような表題曲が最高)

などなど。
単曲で好きなのもいっぱいあったんだけどnoteあたりで少しずつ紹介したいです。
今年もじゃんじゃん守備範囲拡げて行きたい!






2013-12-20

ふくろうず「テレフォン No.1」とワンマンライブ

ご無沙汰しております。
いつものことながら書きかけで放置しすぎた。
ちょっとPC壊れたりしてね…

発売された7月なりワンマンのあった9月なりにタイムスリップした気持ちで、もしくはふくろうずと過ごした一年を振り返りながら読んでいただけると幸いです。

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ふくろうずのニューアルバム「テレフォンNo.1」が好きすぎるので全曲レビューしようと思います。言葉が想いにぜんぜん追いつかなくって、すきだーーーーっ!て叫びたくなるこの感じ。恋だ!



M1.GOOD MORNING SONG

ダイナミックだけど爽やかなドラムがアルバムの幕開けに相応しく、いつでも新鮮で、でもすっと入ってくる曲。穏やかに聴いていたらいつの間にかテンション高くギターが歪んでたりするのがとっても気持ちよい。

あとこの曲は内田さんの高音部がセクシーで!内田さんの、幼いけれど色気もある歌声を愛しておりますが、この曲はメロディも息遣いもハマッていてうっとりドキドキします。


M2.カシオペア

リリースが発表される前にMV(なぜか”DEMOバージョン”)が公開されていた曲。元々はこれがリード曲の予定だったのかな。てゆうかフルバージョン楽しみにしてたんだけど作ってないのかな!?
キャッチーで女の子らしくて、この曲とテレフォンNo.1でこのアルバムの方向性が示されている。
歌い出しから”ずっと前から好きだった”って、テレフォンNo.1は小悪魔っぽいけどこちらはもっと純粋なラブソングという印象。メロディの綺麗さとかカタカナの遣い方とかは内田さんらしくて決して嫌いではないんだけど、正直最初はちょっと引いてしまいました。

でも大サビ ”ほんとの愛じゃなくていい さよならだって愛しい 2人だけのテレパシー 1人だってシンパシー”のこじらせっぷりで全てひっくり返されて”らしい”曲になっていて、感動…
特設サイトのセルフライナーノーツによると、”ロマンチックで超絶明るいラブソングを作ろうと思ったけどまだ自分にはできませんでした(要約)”ということですが、ポップになっても暗さが残ったバランス感覚が大好きです。

あとはこの曲、珍しく打ち込みが入ってて。進化していくのは良いのだけど、音が安っぽいかなーというのと、慎重に使わないとありがちな電子音×ロックみたいになってしまいそうで、ちょっと心配。主張の強い音色でBメロの優しいギターやコーラスの繊細さが潰されてしまってる気がした。とはいえ、繰り返し聴いてるうちに既にほとんど気にならなくなっているのだけど。


M3.テレフォンNo.1




4月のプリティツーマンで初めて聴いたと思うのですが、可愛くてポップで眩しいくらいに明るくて、ちょっと戸惑った。
でも”ピポパポパピプペピポパポ”ってフレーズは強力なフックになっているし、電話番号途中までしか教えてあげないっていうAメロの小悪魔感は内田さんにハマってるし、音源で改めて聴いても、色んな人に胸を張って聴かせられる完成度の高いポップソングになっていて、古参ぶって文句を言う気にはとてもなれなかった。
MVが公開されたときも、TLで今までそこまで興味がなさそうだった人も引っかかっていて、明るい曲ってすごいなぁ届くんだなぁと思った。

そして久保ミツロウさんのこのツイートに激しく頷いた。


”ほんとは電話苦手なの でもまってるの、電話してね”

わたしも電話苦手なので。なのにかかってこないかなって待ってた時とかあったな。かかってこなかったけどね☆

この曲で特に好きなのは、”おまじないしとこ、アブラカタブラブー”って恥ずかしいくらい可愛い歌詞のあと、照れ隠しするようにリズムが緩んでギターソロが入るところです。


M4.パニック!パニック!パニック!

カシオペアやテレフォンNo.1とは逆方向に新しい曲。
4月のライブでは仮タイトル「カオス」と呼んでいて、その通り混沌としたパンクな感じの曲ですが、内田さんと卓丸くんのソフトな声が乗るとちゃんとふくろうずになるということに感激しました。これから更に方向性が変わっていったとしてもわたしはふくろうずを好きで居続けられるんだろうなと、自信が持てた。笑

YOU DON'T KNOW!って繰り返しのフレーズだったり、石井ちゃん活躍しまくりだったり、ライブで本領発揮するんだろうな。
でも、浮きそうなギリギリのこの曲があることでアルバムの強度が上がって、寿命がすごく延びたと思う。


M5.S・O・S・O・S

80'Sちっくなアレンジが最高。イントロのグルーヴ感が大好きで、毎回テンション上がるし、間奏は岡村ちゃんを思い出すダサさ(褒め言葉ですもちろん)で、愛くるしい。”S・O・S・O・S”と囁く内田さんの声がずるくって、ライブでの見所のひとつになると思います。

これも初めて聴いた時はポップだなー!って思った記憶があるのですが、それからできる曲できる曲どれもポップなのでこのアルバムの中では結構箸休め的な位置になってるのが、良い悪いじゃなくなんだかすごいなぁと。なんとなくだけど2ndAL「ごめんね」あたりの雰囲気を感じて、この軽くてつかみどころのない感じもふくろうずらしさなんだなと再認識しました。

あと、内田さんの詞で特に好きだなぁって思うのは哲学的な一節が多かったのだけど、サビのSOSってところを実際なんて言ってるのか分からない歌い方をしていて、今思えば響きを重視した詞も多いんだなと気付きました。
「テレフォンNo.1」のピポパポ~もそうだし、「グッドナイトイズカミング」のサビはスキャット的だし、繰り返しのフレーズも効果的に使っているし、「サタデーナイト」では”ぽっかりハートの”って歌詞カードには書いてあるのに何て言ってるか分からないくらい変わってたり。
刺さって抜けないような鋭いフレーズも書けるのに、意味にとらわれない音楽的な詞も書けて、内田万里恐るべし、と改めて。


M6.春の惑星

メロディも詞もアレンジも割と素直なのが珍しい感じのミディアムバラード。
でもその分内田さんの歌の良さが解りやすくて、気持ち良いです。”ねぇ大丈夫、わかってる、大丈夫”の大丈夫じゃなさが素晴らしい。

正直この曲を聴く度に1番で物足りなさを感じるんですが、大サビが終わってアウトロになる頃にはそんなこと遠い昔のことのように充実感に満ちてる、毎回。それは、”好きだった人の面影はどこ あー今は泣くもんか”ってグッとくるフレーズからどんどん展開していって豪華にコーラスも入って(と思ったけどクレジットに書いてないってことは自分たちでやったの…?)、ドラマチック!なんだけど、重くなく、わざとらしくない。実は4分ちょっとに収まっている曲だというのが、今時間を確認してびっくりしました。それでくどくないんだなぁ。


M7.見つめてほしい

歌い出しは”絶望も希望もループするのもうやめた”って、1stアルバムのタイトル曲であり初期の名曲「ループする」を好きなファンにはドキッとするフレーズから。

ふくろうず流のポジティブさというか、前作「砂漠の流刑地」に通ずるヤケクソ感。サビだけ聴くと可愛らしいラブソングに見せかけて、全力で逆走してる感じがめちゃくちゃ好みです。好きな詞を書き出そうとしたら全部になっちゃいそう。

強いて言うなら、”必然も偶然も出会っちゃえば意味ないじゃん”が二番では”終わっちゃえば意味ないじゃん”に変わるところのセンスがすごいなーというのと、そこから”おんなじだもうやめた””もうやめるの、やめたんだ”への展開というか盛り上げ方というか壊れ方がね、素晴らしい。そしてギターの残響のまま一瞬落ち着いてまた一気に盛り上がる緩急の付け方もたまりません。切り裂いてよ、ギター!

どんどん変わってきているふくろうずからこれまでのファンへのメッセージソングなんだろうか。内田さんがそういうことをするイメージはあまりないけど、ファンの要望(卓丸にもっと歌わせろ、とか)はなるべく取り入れる、と言っていたので意外と客観的に作っているのかなぁ。意図的にしろ偶然にしろ、一気に開けたあたらしいふくろうずのアルバムのラストにこんな、過去を切り捨てる勢いと切実さで”今だけを見つめてほしい”と言われたら、むしろ喜んでついていくしかないじゃないか。いつまでも見つめさせていただきます。



ということで、なんだか同じようなことばかり言ってますが。ポップ!
2ndAL『ごめんね』で好きになったわたし。3rdAL『砂漠の流刑地』を初めて聴いて、一曲目の『もんしろ』の勢いに驚いて、売れに来たなぁ!と、変化の寂しさより嬉しさが勝って頬が緩んだことをよく覚えている。外に向いているのに暗さもしっかり残っていたし。ライブやインタビューからも心境の変化がよく伝わったし。
でもこんなに良いアルバムなのにブレイクはしなかった。

多作だったはずのふくろうずが今回のリリースまで2年もかかったのは、前作が期待ほど売れなかったからというのもあるらしい。メジャーレーベルは大変だ。
でも、前回の比じゃない変化率で、誰にでも届くレベルの「J-POPバンド」となって新譜を届けてくれた今、多くの人に自信を持って勧めたい、こんな良いバンドがあるんだよって自慢したい、彼らの覚悟を広めたい、そんな使命感と、きっと重要なターニングポイントになるという確信で、胸が高鳴る。

個人的な好みで言うと、『ループする』の孤独感や、『砂漠の流刑地』のヤケクソ感の方が好きだ、と思う。でももはやそんなことはどうでも良い!マスに向かって行ったところで内田さんが天才なことも楽曲のクオリティもわたしがふくろうずを好きなことも変わらないことがこのアルバムで分かった。
どうかふくろうずの良さと内田万里の才能をたくさんの人に気付いてもらえますように。打倒ねごと。打倒赤い公園。笑


でも、単にポップに振りきれただけでなく、打ち込みだったり効果音いっぱい入れたりパンクだったり、7曲26分のミニアルバムでありながらふくろうずの振れ幅がかなり広がったのではないかと思います。
前述したように『見つめてほしい』は前作の雰囲気が色濃く残っているし、『カシオペア』や『テレフォンNo.1』のような曲でも必ずしもポップに迎合したわけではなくて、故意にしろコントロール不能な個性にしろひねくれた部分は色濃く残っているから、以前からのファンも安心して変化を受け入れられている。
それでいてこの短さなのに緩急がついてまとまりもあって、一周の満足感は元よりリピート再生にも余裕で耐えられるアルバムになっているわけで、初めて聴く人に打ってつけなのです。だから今日もわたしはふくろうずが好きだー!って叫んじゃうんだ。(twitterとかで)



そしてワンマンライブ。
『ふくろうずの内弁慶ツアー ~パピプペピンポイントNo.1ver~』 at LIQUIDROOM















ベルの音と共に電話のイラストが投影された幕が開くと、揃いのドットの衣装に身を包み、カラフルで安っぽいヘッドホンを着けたメンバーが登場。いいねいいね。

観たのは4月の対バンぶりで、その間の評判を聞いてものすごく期待していましたが、ほんと、びっくりした。
まずね、一曲目から調子が良いの。笑 いつも最初はそんなに調子が上がらず後半どんどん良くなっていくパターンで、特に内田さんは喉が開くまで時間がかかる印象があって、それも愛おしく思っていたのですが。今回は序盤に新譜からのポップな曲が続くセットリストだったというのもあり、とてもパワフル。パワフル?ふくろうずにそんな言葉を使う日が来ようとは。

一曲目『テレフォンNo.1』の間奏では受話器に向かって「もしもし?トーキョー!カムバック!」と叫ぶ内田さん。既に最高潮。客席もunitでのワンマン(良いライブだったけど客性が異様に大人しかった)が何だったんだと思うほど盛り上がってる。

『春の惑星』での石井ちゃんのギターが良すぎた。石井ちゃん。2年前のワンマンでは棒立ちでギターを弾く姿が印象的すぎた石井ちゃん。いつの間にバンドにとってこんなに大きな存在になっていたんだろう?笑顔で楽しそうに、メガネを振り落としそうになりながら演奏していたのがすごく嬉しくなりました。
以前のインタビューで内田さんが、石井ちゃんが楽しそうに演奏するかどうかが曲を判断するバロメーターだと言っていたのが、こういうことかと実感するライブだった。楽曲の幅が広がっても変わらずに石井ちゃんのギターが鳴っている限りふくろうずのアイデンティティは保たれていて、ネガティブな意味で「ふくろうずは変わった」と言われることはないんだろうと思う。

『通り雨』、前にライブで聴いた記憶が全然ないんだけど(笑)、音源と全然違う印象ですごく好きになった。湿度が上がっていて曲の世界にすっと入れた。新曲群が明るいので孤独感も際立ち、ライブ映えする曲になっていたと思います。

『サタデーナイト』は好きすぎて何も言えないけど、演ってくれてありがとう。
『ループする』は、他のメンバーをはけさせて、内田さんのソロ名義「うんこマン」で、キーボード弾き語り。リズムを崩して文字通り語るように歌ってくれたので、メロディの良さが際立つだけでなく詞の悲しさもずっと増して、聴いていてつらくなるほどに沁みました。元々特別好きなこの二曲は涙腺が緩んだ。

そしてはけていた3人が光るサングラスをつけて戻ってきて!新曲『GINGA GO』。まさかのテクノ…!卓丸はヴォコーダーでずっと「ギンガ・ゴー」って言ってる。
『パニック!』を聴いて”更に方向性が変わっていったとしてもわたしはふくろうずを好きで居続けられるんだろうなと、自信が持てた”とさっき書いたのが揺らぐレベルでびっくりして、なんかもうネタかマジか判断しかねる感じでしたが、楽しく踊らせていただきました。卓丸はもはやベースも弾いてなかったけど(あれ、後半弾いたっけ…?)、石井ちゃんは変わらずギターを掻き鳴らしていることに安心したりして。
うん、やっぱりふくろうずの中核を成すのは、内田さんの歌声と石井ちゃんのギターなのかも。

『だめな人』は、お決まりのハンドクラップが広い客席からも自発的に起きて嬉しい!そしてこれまたお決まりの卓丸の煽りなんですが、フェイントかけてて笑った。以前よりずっと堂々と前へ出て腰を振っていて、とても気持ち悪くて、こんなところで卓丸の成長を感じるとは。笑 この曲の盛り上がりがライブバンドとしての進化を裏付けていて、なんだか感慨深かったです。

もうひとつの新曲『マーヴェラス』は覚えられなかった…けどこれも打ち込み系でびっくり。『GINGA GO』よりはこれまでのふくろうずに沿った感じだったかな。これからも楽しみだー。


全体的にね、本当に、成長を感じたライブだった。
特に内田さんは、ヴォーカリストとして、フロントマンとして自覚的になって、今までも天然で十分凄かったのに、もはやどんなに大きなステージでも観客を魅了できるくらいの魅力を放っていた。それは立ち振る舞いも、表情も、歌い方も。
自分自身が楽しむと同時に、お客さんを楽しませること、お客さんに見られることをとても意識していたように思う。可愛い人が自分が可愛いことを自覚したときの最強っぷりったらないや。ステージ上のことだから嫌味もなく、とてもカッコよかったです。心底嫌そうに歌っていたあの頃とは別人のようで。みんなに観てほしいよー!

元々人前どころか人と関わることすら苦手そうな3人が、『砂漠の流刑地』のワンマンからライブに力を入れるようになって変わったと思っていたのが、今回そんな義務感じゃなくもっとはっきりした覚悟と自信を持っているように見えた。吹っ切れたら楽しめるようになったんだろう、もしくは、意識して自分たちも楽しもうとしたのかも。そういう諸々のパワーがステージから伝わってきて、この日の盛り上がりに繋がったんだろうと思います。
ふくろうず、覚醒!
感動的なほど、嬉しくって楽しいライブでした。















SET LIST
1.テレフォン No.1
2.カシオペア
3.パニック!パニック!パニック!
4.S・O・S・O・S
5.春の惑星
6.通り雨
7.サタデーナイト
8.ループする(弾き語り)
9.新曲 GINGA GO(仮)
10.グッドナイトイズカミング
11.トゥーファー
12.だめな人
13.GOOD MORNING SONG
14.見つめてほしい
ENC1.新曲 マーヴェラス(仮)
ENC2.砂漠の流刑地
ENC3.街はいつも雨のよう

2013-04-07

アーティストとアートに関わる人




映画「ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの」を観ました。ドキュメンタリーの第二弾だそうで、前作が結構評判良かったよう。


映画の主人公は老夫婦。公務員をしていた二人はアートが好きで、若いころから趣味で現代アート作品を収集してきた。条件は、給料で買える値段であることと、1LDKのアパートに収まるサイズであること。いつしか収集した作品数は2000点を越え、一点も売却することなくナショナル・ギャラリーに寄贈した。…というところまでが前作だったようです。(今調べた)

今作は、あまりに膨大な数でナショナル・ギャラリーでも収蔵することができない、しかも数年の間に作品数が倍に増えた…ということで、全米50州からひとつの州につきひとつの美術館で50館を選び、それぞれ50作品ずつ寄贈するプロジェクトが計画され、コレクションが散っていく様子と、ふたりのコレクションが終わる時を追った作品。

最初に言うべきこととして、ちょっと寝ました。淡々としたドキュメンタリーだから仕方ない…興味はあったのに頭がついて行かず、しばらくうとうとしていたので夢と映画が混じって中盤覚えてないです。
でも、現代アートにまつわるお話としても、夫婦の物語としても楽しめました。

美術作品のコレクターと言うとおカネが大きく絡んでくる感じがしますが、この二人は、CDだとか本だとか洋服だとか雑貨だとか、純粋に好きなものを所有したいという誰もが持つ欲の対象が現代アートだったという感じ。小さなアパートに数千点の作品なんて、聞いただけでは想像がつかないけど、特にお気に入りのものは壁一面に飾って、立体作品はそのまま天上に吊るしたりして飾り、その他の作品(大部分は紙の作品)は、本棚やベッドの下いっぱいに押し込められている状態。一方で、数点のお気に入り…もしくは画材の性質によって?は、布をかけて日焼けしないような配慮もしている。ただただ好きなものと生活しているというのが伝わってきた。

そうかと言って、アーティストにとってはベッド下に収納されたりするのは複雑な気分もするだろうが、この夫婦、特に自らも絵を書いていた夫のハーブは確かな審美眼を持っており、アーティスト達ととても仲が良さそうなのが印象的だった。現代アーティストなんてそうそう評価されないだろうから、収納方法がどうあれ、見つけてもらえる、購入してもらえるというのは嬉しいことなんだろうなぁ。
そういった世界からは縁遠いわたしからすると、作品を個人で購入するなんて勿体ない、まとめて美術館で観られるようにして欲しいとつい考えてしまうが、ドキュメンタリーの中で美術館の人も「美術館はコレクターの寄贈で成立する」「コレクションのコレクションが美術館」と言っていて納得した。購入資金を持つ美術館なんてごくわずかなようだ。

幾つか取り上げられていた作品も印象的だった。ひとつは正方形の絵で、ヴィヴィッドな青地に小さな丸と三角が緑色で描かれた作品。連作になっているが、丸と三角の場所が違うだけで、一枚一枚の印象は変わらないし、小中学生でも描ける類の作品。でも、連続で観ると、丸と三角が画の中を移動しているようだと解説されていて、確かにシンプルなのにリズミカルな素晴らしい作品に見えてくる。
違うものでは、薄い水彩絵の具を白い紙に適当に落としただけのような作品があった。これも連作で、落書きや試し書きのように見えるが、美しい色彩が花開いたようだと言われると、そう感じる。この作品は作者が実際に寄贈された美術館を訪れて、展示の仕方を指示している様子が取材されていた。横に並べて、目線の少し上に展示して欲しいとのことで、床から何メートル何センチの高さかまで指示していた。

逆に、異なる作者のある作品は、上下左右が決められておらず、展示する人に委ねるというのも面白かったし、もっと驚いたものでは、英単語を壁に描く作品で、指定された英単語を展示する側の人が自由に壁に描くことで完成するというものや、弟子のような画家を雇って、気に入った作品があると自分のサインを入れて発表するというアーティストも紹介されていた。
現代アートに限ったことではないけれど、作者が存命の場合は展示方法まで監修できるので、より”正しい”状態で観ることができることはとても嬉しい。逆に、描くこと自体から展示方法、解釈の仕方など、人に委ねることで完成したり、それも含めて作品であるというものも楽しい。

夫婦の物語としては、二人が信頼・尊敬し合っている様子に憧れました。現代的な、お互いに自立した夫婦関係にも憧れがあるけれど、二人でひとつの趣味をずっと続けていくというのは、ひとつの理想の夫婦像を見た感じがする。依存でも、独立でもなく、共に生きることに強力で明確な意味があるお二人。映画の最後もきれいでした。例えばこれが小説だったら、きれいにまとめてつまらないなと感じるだろう。人生のラストシーンをこんなに美しく飾れたら、と思う。この映画の後の生活がエンドロールになるか続編になるかはわからないけれど。



そして、その翌日に行ったのが国立新美術館で開催されていた「アーティスト・ファイル2013」。アーティスト・ファイルは、国内外の注目すべき作家を紹介する展示。国立新美術館で毎年開催されており、過去2回ほど行ったのかな、好きな企画です。

この企画の好きなところは、まず絵画や写真や立体、インスタレーションなどジャンルレスなところ、アーティストごとのブースが分けられており、個展のように落ち着いて観れること、各作家の分量が少なすぎず多すぎずなので、ある程度そのアーティストやアイデアを理解できること、現代の作家なので、本人立ち会いのもと展示されていることです。
それに、現代のアーティスト特有なものなのかどうか分かりませんが、コンセプトが面白いものが多いんだよね。技術的なことはわからなくても楽しめる。

今年は8名の展示でしたが、気に入ったのは、ヂョン・ヨンドゥ、國安孝昌、ダレン・アーモンド。


ヂョン・ヨンドゥは一番最初のブースだったのですが、まず派手な衣装を着た少女の後ろから美しい光の差す写真が目に入りました。
こどもの描いた絵を写真で再現するという作品群で、写真なのにファンタジック。野外で撮影されたもののほうがより違和感が素敵だった。
不思議な色遣いの服は手作りだし、小物なんかもいびつだから、例えば照明器具のようなものもサイズがバラバラなのを再現して作ってあるし、大人が見ただけでは何とは分からない物体もなるべく再現されているし。一枚の写真に掛けた時間が想像されるのも面白かった。

ヂョン・ヨンドゥは映像作品もあって、こちらも面白かった。画面の右側では、韓国人の老人が昔の印象的な記憶について語っている。5分前後かな。左側では、スタジオで作業服を着た人が何やら作業をしていて、植物や建物などセットを組み立てている。老人が話し終わる頃に、想い出のシーンがスタジオに再現されているというもの。こちらは写真とは逆に、現実の話を再現したセットがファンタジックで絵本の世界のようなのが面白い。それから、老人の話はインタビュー形式ではなく一方的に語る形で、ツッコミが入らないのが逆に批評的というか小馬鹿にしているような感じがするなと気付いて面白かった。話しぶりから自尊心や自己愛が伺えたり、話を誇張しているんだろうなと思ったり。



國安孝昌は、部屋に入った瞬間の威圧感、重量感がものすごくて圧倒された。陶のブロックと丸太が組まれた巨大な作品。部屋の中いっぱいに作られている異物感がおもしろい。前の部屋が白いシーツで制作された作品だったので、ギャップの大きさも良い効果になっていた。

ダレン・アーモンドの作品は、病床の祖母を見舞った際にインスピレーションを受けたというインスタレーション。穏やかな音楽の流れる暗い部屋で、ドレスアップしてダンスをする若い男女の足元を映し出す映像が浮かび上がり、その向かいにそれを眺める作者の祖母のまなざしの映像、周りには新婚旅行先の風車や噴水の映像が配置されている。インスタレーションなので説明では伝えづらいけど、永遠に踊り続ける男女が何とも切なく美しかった。想い出というのは楽しいものほど悲哀性も強くなる。まぁ、言葉にしてしまうと大したことでもないのだけど、五感で360°から感じると素晴らしい体験となるのだ。


同じくダレン・アーモンドの作品で、月の光だけを使って撮影された風景写真も美しかった。写真のことはよくわからないのだけど露光時間?を長くして撮るので、一部が滑らかにぼやけていて最初は絵画かと思った。光の感じも風景の輪郭も幻想的でした。

ということで、勝手に今年のキーワードは”現実の中のファンタジー”でした。他の作品でもそういう側面があったし。以前観に行った時も、トレンドというほどではないけど共通性を見出して楽しんでいたのだけど、忘れちゃったなぁ。

残念ながら4/1で終わってしまったのですが、会期は長めだし誰でも楽しめると思うので、来年開催された際は是非。おすすめです。



リンク

・『ハーブ&ドロシー  ふたりからの贈り物』
 http://www.herbanddorothy.com/jp/

・アーティスト・ファイル2013―現代の作家たち
 http://artistfile2013.nact.jp/

・片桐仁と行く『アーティスト・ファイル2013』展
 http://www.cinra.net/column/artistfile2013/01.php